届け───私の言葉
それから、すばる君と並んで帰る帰り道。

何気ない会話が楽しくて、時間が経つのなんて忘れていた。

気がつけばもう私の家の前で、すばる君とはさよならしなければいけない。

「じゃあな、沙那。また明日。」

「…うん。また明日。」

私達は適当に挨拶を交わして、すばる君はそのまま真っ直ぐ行き、私は自分の家のドアを開けた。

「…ただいま。」

当然、返ってくることのない返事。

キッチンには、乱暴に置いてあるコンビニの卵焼き。

私はそんなもの食べる気もしないから、いつも残してる。

階段を上って部屋に入る。今日も、静まり返った家。

お母さんは決まって朝帰り。二つ上のお姉ちゃんは部屋に引きこもり。六つ上のお兄ちゃんは、いろいろ遊び呆けてる。

隣の部屋にはお姉ちゃんがいる。どうせ今日も泣いているんだろう。自分が一番辛いと思って。辛いのはお姉ちゃんだけじゃないのに。

お母さんに愛されてるのに。

私は、お母さん、いや、家族全員から嫌われている。
例えば、お母さんは、私にはご飯を作らないけど、お姉ちゃんには作ったり、洋服とかも、全部お姉ちゃん優先。
私の願いなんか何一つ聞いてくれない。

まぁ、そうなってしまったのは、全て私のせいなんだけど…。

「お姉ちゃん?入るよ。」

私は一応お姉ちゃんの部屋に行き、ちゃんといるかだけ確認しておいた。

案の定、お姉ちゃんは部屋の隅でしくしく泣いている。

「…お姉ちゃん、夜ご飯食べた?もし食べてなければこれから一緒に…」

「近寄るなクズ!!勝手に人の部屋入るんじゃねぇよ!!」

あぁ、また、

「…うん、わかった。ごめんね。」

ほら、また、

「お前なんか死んじまえよ!!お前のせいで私がこんなに辛い思いしてんだよ!!」

「……うん…ごめん。」

私の心になにかが刺さった。

それは、痛みを感じさせるものじゃなくて、悲しみを感じさせるものなんだ。

死ねばいいのにね、ほんと、私なんか。 生きてたってなんの意味もないのに。

私は自分の部屋に戻った。

机の上のスマホを見ると、ラインが二件入っていた。

「すばる君だ…。」

相手はすばる君。今日の帰りにラインを交換したのだ。


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