鈍感な二人
クリスフォード・アッシュベルト。それが、先ほど見合い相手に頬ひっぱたかれた人物の名前である。


アッシュベルト家は代々国王の側近を多く輩出してきた、頭脳明晰な家系である。クリスフォードもその例にもれず、現国王の右腕として国家の政に携わっている。

その優秀さは国中に知れ渡っているが、同時に彼の変わり者っぷりも知れ渡っている。


クリスフォードは、その見目麗しい要望と、家柄からいって、縁談に困るようなことはないはずだった。なのに、当の本人のやる気のなさと、見合いの席の失言の数々で、２５歳にして未だ独身。


変わり者というのに加え、行き遅れならぬ、貰い遅れと言う不名誉な称号まで得てしまった。



どうしたものかとアルは思い悩む。


このままだと、名門アッシュベルト家は途絶えてしまう。



悩む彼は、ある噂を思い出した。



あの噂が本当かどうかはわからないが、それでも今より悪いことにはならないのではないだろうか。





この国には、同い年以上の主人がいる場合、その主人より先に結婚してはならないという暗黙の了解がある。


クリスフォードはそんなこと気にするなと言うが、代々アッシュベルト家に仕える者として、無視はできない。

アルは現在２３歳。ぶっちゃけもう貰い遅れだ。



主人と、そして自分の将来のため、アルはある決断をした。



「クリス様。ブルック家に縁談を申し込むのはいかがでしょう？」


「何だ、アル。もう次の縁談か。まぁいい。お前の好きにしろ。」


「かしこまりました。」


そう言ってアルは一礼をして部屋から去って行った。



縁談にはとことん興味のないクリスフォードだが、アルが自分を案じているのはわかっているし、自分が結婚しないことにはアルが結婚しなというのもわかってる。なので、クリスフォードはアルが思うようにさせることにした。


まぁ、期待に応えられるかは別問題として。
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