鈍感な二人
「では、今回の私の縁談は受けていただけないということにかな?」


クリスフォードが慎重に口を開いた。それを聞いたエーデルはクリスフォードをじっと見つめながら何かを考えている。

審判をうけるようにな面持ちで、じっとエーデルの言葉を待った。



「失礼ですが、アッシュベルト家は、どの程度国王様に意見を申し上げることが出来るのですか?」


その言葉に、クリスフォードは、眉をひそめた。さきほど、権力に興味はないと言った言葉からはかけ離れるからだ。だが、クリスフォードは、不思議と嫌悪感はいだかなかった。だだ、何か理由があるのではないかと考えた。



「なぜ、そのようなことを知りたい?」


クリスフォードの問いに、エーデルはわずかにためらって見せた。訳を話すのを躊躇っているようだった。


「もしかしたら、お力になれるかも知れない。」


それでもエーデルはしばらく沈黙していたが、クリスフォードが辛抱強く待ったおかげか重い口を開いた。



「ご存知の通り、母ヘレンはわたくしの実の母ではございません。弟もおりますが、彼は母の連れ子で、ブルック家の血をひいてはおりません。恥ずかしながら、父には弟がおるのですが、この人物が問題なのです・・・」


ここでエーデルは言葉を詰まらせた。


「何が問題なのだ?」


クリスフォードはすかさず相槌を打ち、エーデルが話を進めるように促した。


「叔父は、私がどこかに嫁いだ時には、自分こそがブルック家の爵位を継ぐにふさわしいと言うのです。」


クリスフォードは返答に困った。エーデルの話は決して珍しいケースではない。だが、彼女はそれをよく思っていないようだ。


クリスフォードの思いに気づいたのか、エーデルは困ったように笑った。


「それのどこが問題なのかとお思いでしょう?問題は二つあるのです。」


「二つ?」


「えぇ。一つ目は、叔父が爵位を継ぐのなら、弟と母は家を追い出されるということです。普通なら、生家に身を寄せるのでしょうど、母はおそらくそれをいたしません。母と弟は路頭に迷うことになります。

 もう一つは、叔父には商才がないということです。おそらく、彼が領主になれば、ブルック家の土地はそのままではいられないしょう。」


そう言ってエーデルは下を向いた。スカートをギュッと握りしめた。





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