鈍感な二人
アルは、ほほ笑み合う二人を後ろから眺めていた。



主人の不躾な提案に気分を害する様子もなく応じたエーデルは、その話を聞く限り、おそらく主人に匹敵するくらいの変わり者だろう。



「そうか、エーデルは、バラを育てるか。」


「はい。」


「うちの本屋敷には、大きなバラ園があるぞ。他国から取り寄せた珍しい種もある。」


「本当ですか?!」



そんな会話をしている二人を見て、いや、正確にはクリスフォードを見て、アルは違和感を感じる。




あれ?クリス様は、女性に対してこんなこと言うお方だっけ?


本来、クリスフォードは建設的な話を好む。なので、噂話や、中身のない世間話を好む貴族令嬢とは話が合わない。だが、今クリスフォードは楽しげにエーデルと会話してる。


思い返してみると、今日のクリスフォードは、どこかおかしかった。


話を躊躇するエーデルに相槌を打ってみたり、不安そうなエーデルに微笑みかけてみたり。



もしかして・・・この縁談結構あたりだったかも。



アルは、そう思い始めていた。


だが、長い付き合いから、クリスフォード本人に自覚がないことも予想がついている。そして、おそらく、この予想は外れてはいない。



まぁ、とにかくうまいことまとまったみたいだし、気長に見守るとしよう。



アルはクリスフォードを生暖かいまなざしで見守っていた。
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