魔法使い〜大地が堕ちる刻〜

城門の外には騎士団が魔物の進攻を迎え撃つために並列し、指揮を高め戦の合図を待っていた。

城内に入った光に気付かないほど気が詰まっており、彼は悟られずに侵入できた。

着地に失敗したせいで身体を強く廊下に打ち付けられ、痛がりながらも近くの窓から戦いの行方を見届けようと、恐くもないのかそこに座った。


傲慢な叫びが轟くと、一斉に騎士団は魔物に走り出す。魔物の中で闇を奉る法を扱う種族が詠晶を開始し、他は歓喜をあげて襲い掛かる。



「いつまで観てるつもりだ？」


鋭く研磨された魔力が刺すように周りに放出している三十を過ぎた男が、険しく睨み付けた眼光で彼を見た。彼は戦いを見ながらムフフと笑い、「さぁね」と答えた。


彼の名はカリス・ジスネーア。今の名はカリス・タルマンではあるが、魔法能力に長け、千もの魔物を一人で払いのけたと噂される実力があるという。だが、姿を見たものがいない。どこから噂がたったのかはわからぬが、火のないところに煙はたたないであろう。

そして、男性は魔剣士（魔法と剣術を併せ持ち、魔を討伐する）と称された一族の長であり、人里離れた場所で密かに生を成していた種族。人とは余り外見は変わらず、多少打たれ強い。名はマタリ・ケリ・リミアス。マタリ・ケリは魔の封印に携わった賢者の一人で、長になるものは親に与えられた名にその名前を付ける。この人種は力が全てであり、力あるもの下にしか就くことはない。



「私は先に行くぞ。他の二人も到着したようだからな」


窓から勢いよく飛び翔け、剣に妖しき光を纏い、着地と同時に真下にいた一匹を切り裂いた。

人の力ではこのようなことは出来ない。他種族の人間だからこそ、さらには魔剣士であるからこそできる技である。