ヒマワリの嘘
「それにしても、生徒さんはいないんですか?」
私は校舎を案内してもらうと、人一人いないことに気づいた。
確か今日は水曜日だし
普通なら登校日だよね?
「あ、それが今日は休みなんだ
祝日だからね」
「なるほど」
納得。
「まあ明日はちゃんとあるからさ。
それと、一つ頼みごとをしていいかい?」
頼みごと?
なんだろう。
「日葵ちゃんには
名前を変えてもらいたい」
「…名前!?」
私は突然の頼みごとに驚き、いつもより声を大きく出してしまった。
「ごめんごめん、言い方が悪かったね
この学校の時だけ嘘をついて欲しいんだ」
よっぽど私の反応が面白かったのか、「アハハ」と笑いながら辰也さんはそう言う。
「大丈夫ですけど、でもどうして?」
「日葵ちゃんを知ってる人がいるかもしれないからね
勿論、過去の事も、今も。」
辰也さんは私の心を悟っていた
過去を怖がってしまう、この私の気持ちを。
でも、いつまでも逃げれないという現実も自分では分かっている
ゆっくり、ここに慣れることが出来れば
その内辰也さんにも聞こうと思ってたから。
「分かりました。じゃあ、
スズキ ヒナミに」
「随分と変わるね
よろしく、日波ちゃん」
私はパッと思い浮かんだ名前をそのまま言うと、ニコッと辰也さんは笑いながら言った。
自分で言ったものの、中々の違和感がある
間違えないように気をつけよう。
「じゃあ寮はここ、707ね
あと夜の7時にひま…日波ちゃんの歓迎会があるみたいだから参加、よろしくね」
私は紙袋を渡され、それだけを言い残すと辰也さんは手を振りながらこの場を去った。
「…なんだろうこれ」
取り敢えず、部屋に入るか。