強引社長といきなり政略結婚!?
◇◇◇
その日のアルバイトは、多少の痛みはあったもののなんとか完遂。ゆかりちゃんは『動きが変ですよ』なんて私のことをからかいながらも、いつもは私がやっている力仕事を代わりにやってくれ、かなり助けられた。
ただ、自転車ではさすがに行けなくて、父の運転手の黒木さんに送り迎えをさせてしまった。
食事をとったあと、自室のソファに座り、握り締めたスマホをじっと見つめる。新しく登録したばかりの連絡先を開き、通話をタッチしようと指を近づけては引っ込めてを繰り返していた。
ディスプレイには“朝比奈一成”の文字が並ぶ。
今日のプレゼントのお礼を言おうと思うのに、なぜか緊張して最後の一歩が踏み出せない。触れるまで数ミリのところで指がプルプル震えた。
その時不意を突いて着信音が鳴り響く。
「わ!」
思わずスマホをソファに落としてしまった。
急いで拾って見てみると、それは朝比奈さんからの電話だった。
なぜか、鼓動が一度大きく弾んだ。
応答をタップし、耳にそっと押し当てる。
「……もしもし」