強引社長といきなり政略結婚!?
◇◇◇
自転車を飛ばして家に着くと、敷地内に孝志おじさんの車と、見慣れない外車が停まっていた。朝比奈さんのものとは違う。父のお客か、会社関係の人か。
「ただいま」とひと声かけて靴を脱いでいると、多恵さんがスリッパの音を響かせてやってきた。
「汐里様、おかえりなさいませ」
多恵さんが律儀に頭を下げる。
「お客さま?」
「はい。旦那様の弟君と西野様とおっしゃる方でございます」
「西野!? 西野浩輔?」
思わず目を剥いた。
帰り際に『またあとで』と言っていたのは、またうちに来る予定だったからなのか。
「はい、確かそんなお名前だったかと。お知り合いの方ですか?」
「うん、幼馴染」
多恵さんがこの家に来たのは、浩輔くんが留学して一家が引っ越したあとだ。