強引社長といきなり政略結婚!?
「西野くんが、ぜひ汐里を嫁にもらいたいと。それを受け入れれば、会社統合の条件をもっと良くしてくれるそうだ。その条件というのが、コンラッド開発が提示したものよりずっと勝っている。こんないい話はないじゃないか。どうだ?」
孝志おじさんは目を大きくして私の反応を窺った。
突然そんな話をされて、『はい、そうですね』と答えられるはずがない。朝比奈さんとの話が進む前ならまだしも、私の気持ちはもうすでに動き始めてしまっている。
助けを求めるつもりで父を見た。
それを受けて、父が居ずまいを正す。
「孝志、ちょっと待ちなさい。汐里が驚いているじゃないか」
「それは驚くでしょうに。なんせ、好条件の結婚話が舞い込んできたんだから」
「そうじゃない」
いつも穏やかな父が、珍しく声を荒げる。
「兄さん、経営のことは俺に任せておけばいいんだよ」
「それなら言わせてもらうが、汐里の結婚のことは孝志が口出しすることじゃない」
空気が急に張りつめた。