強引社長といきなり政略結婚!?

とっさに拳を握る。

そんな昔の話をどうして今ここで!
しかも、弾みでしただけであって、好意があったわけじゃないのに。


「西野さん、それは彼女のご両親のいる前でする話じゃないですよ」


朝比奈さんが静かに言う。普段より低い声だった。
彼が諌めるように言ってくれたおかげで、私は今にも浩輔くんに繰り出しそうになっていた拳を下ろす。

朝比奈さんに言われて初めて両親を見てみれば、ふたりとも目を瞬かせて唖然としていた。朝比奈さんの突然の登場にも、浩輔とのファーストキスの話にも驚いているような様子だ。

浩輔くんは、朝比奈さんに言われて面食らったのか、居心地が悪そうに視線を彷徨わせている。多少なりともダメージは受けたみたいだ。


「ともかく、藤沢ゴルフ倶楽部と汐里の件は、こちらの藤沢専務と話を詰めていきますので」


すぐに冷静さを取り戻したか、浩輔くんはまっすぐに朝比奈さんを向いてそう宣言すると、私たちに一礼して孝志おじさんと部屋を出ていった。

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