強引社長といきなり政略結婚!?

「いや、一成くん、身内の恥をさらしてしまったね……」


父が眉尻を下げ、困ったような顔で笑う。


「いえ、私も突然お邪魔してしまい失礼しました」


朝比奈さんは恐縮したように頭を下げ、「先ほど専務がお話されていたのは?」と続ける。


「いやはや、私の不徳の致すところでね。最初は賛成していた弟の孝志が、突然コロッと態度を変えたものだから、正直私も驚いているところなんだ」


ふぅと長く息を吐き出し、父はこのごろ出てきたお腹をさすった。
父もたった今、浩輔くんが持ち込んだ話を聞いたばかりらしい。


「でも、コンラッド開発との話を反故にする気はないから。もちろん、汐里との縁談もね」


その言葉を聞いてほっとする。
会社の実権を握っているおじさんだけに、簡単に父が折れてしまう気がしてならなかったから。

< 163 / 389 >

この作品をシェア

pagetop