強引社長といきなり政略結婚!?

「浩輔くんのことは幼いころから知っているから、もちろん悪い話じゃないとは思ってる。だが、一成くんほどのいい青年は、どこを探してもいない。会社と汐里、両方を任せられるのは一成くんしかいないと思っているから」

「そこまで言っていただけて光栄です。ありがとうございます」


朝比奈さんが真面目な顔で目礼する。


「私も、今回のお話を譲る気はありません。こちらとしましても、最善を尽くしてまいりますので、藤沢社長もどうかご心配なさらずに」


朝比奈さんの頼もしいひと言に、ふたりとも嬉しそうに笑った。
彼にそう言ってもらえると、なによりの自信につながる。一時はどうなることかと膝が震えそうになったけれど、朝比奈さんからは不安な要素はいっさい感じない。
彼は、私のほうを見て笑みを浮かべながら大きくうなずいた。

「ところで朝比奈さん、今日はどうして?」


会う約束はしていなかった。
アルバイトを終えた時に見たスマホに、メールも入っていなかったはず。


「急に汐里の顔が見たくなってね」


恥ずかし気もなく朝比奈さんが言う。

いつものことながら直球の言葉に、私は上手な切り返しができない。言葉に詰まって目を白黒させるしかないという無様さだ。


「汐里は本当に幸せね」


母に言われて、私は頬が熱くなるのを抑えられなかった。

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