強引社長といきなり政略結婚!?

◇◇◇

『夕食を一緒に』と朝比奈さんに誘われ、私たちは彼の車で市街地から少し離れたところにあるフレンチレストランへ来た。予約以外の入店が難しいことで有名な店だ。朝比奈さんは私との夕食を予定して、予約してくれたんだろう。
それだけのことなのに嬉しい。

よく来るのか、彼は店のスタッフに「朝比奈様、いつもありがとうございます。お待ちしておりました」と言われていた。

案内されて窓際の席へと案内される。
そういえば、こうしてふたりで外食をするのは初めてだ。今まであったチャンスは、うちで家族と一緒か、私がお尻を怪我したせいでドライブスルーだったから。

スタッフとやり取りをしながら、朝比奈さんが料理を決めていく。彼が車だったこともあり、アルコール類はアペリティフも含めて注文しなかった。乾杯は炭酸水だ。


「ズッキーニとカニのテリーヌ仕立てでございます」


オードブルが運ばれてきた。
ナイフを入れ、フォークで口へ運ぶ。
おいしい。下に敷かれたトマトソースの酸味が、ほどよく胃を刺激してくれた。

ふと顔を上げると、笑みを浮かべた朝比奈さんと目が合った。


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