強引社長といきなり政略結婚!?

「どうしたんですか?」

「……いや、さっきのことを思い出してた」


さっきのこと?
首を傾げると、朝比奈さんはさらに目を細めた。


「汐里の家に行った時のことだよ。俺がリビングに顔を出した時の汐里の顔」

「……私の顔?」

「ものすごく嬉しそうな顔してた」

「えっ……」


その時のことを思い出して、ぼっと顔に火の手が上がる。
朝比奈さんが来て嬉しかった自覚があるだけに、そこを指摘されて動揺してしまった。


「そ、それは、あの場の話があんまり唐突だったから。朝比奈さんが来て、場の空気が変わるかと思って」


少し早口で弁明する。
今さら、なにを隠し立てしようというのか。自分の気持ちは、もう誰が見ても明白なのに。


「それじゃ、別に俺に会えて嬉しいわけじゃなかった?」

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