強引社長といきなり政略結婚!?
助手席でひとり緊張に包まれていると、朝比奈さんの手が私の髪に触れた。
ドキンと心臓が弾む。
気づけば、そこはもう私の自宅の前だ。車が停車していた。
「特に今夜は帰したくなかった」
彼の手が髪から頬へ移動する。朝比奈さんのほうへ顔を向けさせられた。
彼は、いつになく真剣な眼差しだった。
ゆっくりと顔が近づいてくる。高鳴る胸。
朝比奈さんとのキスはもう何度目かになるのに、体が震えるほどに鼓動は速まる。
目を閉じた瞬間、彼の唇が私に重なった。
いつもより情熱的に感じるのは、私のファーストキスの話が出たせいなのか。息もうまく取り込めない。彼のキスに応えようと必死だった。
ひとしきりそうしたあと、朝比奈さんの唇がそっと離れる。至近距離で合った彼の目が、三日月のように細くなった。
そのまま私の肩を引き寄せ、運転席から器用に抱き締める。
ドキドキするのに、なぜか落ち着く。
男の人の腕の中が、こんなに心地いいものだとは知らなかった。ふわふわして、足が地についていないような感覚。自分が綿毛にでもなったみたい。
目を閉じて、朝比奈さんの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。