強引社長といきなり政略結婚!?
数々の縁談で断られ続けてきたこの私は、そこまでして手に入れたいと思われるような女じゃない。世間でいうところのハイスペックな朝比奈さんが、熱烈に恋するレベルではないのだ。
それなのに私ときたら、すっかり舞い上がっていた。
朝比奈さんは、おじい様のために藤沢ゴルフ倶楽部を手に入れたかっただけ。朝比奈さんが私に言ってくれたことは、全部嘘だったのだ。
力が抜けたようにシートに体を預けた。
「間もなく、社長の朝比奈と離れざるを得ないことが起きます。深入りしないほうが身のためです」
「……離れざるを得ないことってなんですか?」
「それはそのうちわかることでしょう」
日下部さんは、逃げるように窓の外へと視線を流した。
情報をチラつかせておいて、核心部分は教えてくれないなんてひどい。
「それじゃ、どうして今の話を私にされたんですか?」
深入りしないほうがいいなんて、わざわざ待ち伏せまでして。
日下部さんの視線が私に舞い戻る。
「私は、コンラッド開発の発展をただひたすら願っているのです」
「つまり、そのためには私が邪魔だと」
「そうは言っていません。より良いほうへ導くためです」
邪魔だと言っているも同然だ。
日下部さんは、眉ひとつ動かさずに言った。