強引社長といきなり政略結婚!?

◇◇◇

日下部さんの車を降り、自宅へと自転車を飛ばす。
低く垂れこめた雲を抱えた鉛色の空は、私の心をそのまま映しているみたいだ。重くて重くて仕方がない。それを振り切りたくてペダルをぐんぐん漕ぎ、冷たい空気を裂くように走る。

ところが猛スピードで家の門を通り抜けたところで、急ブレーキをかけた。
浩輔くんが立っていたのだ。自分の車に寄りかかるようにして腕組みをしている。私に気づいて、彼が手を軽く上げた。


「……どうしたの?」


昨日の今日だけに、自転車から降りて身構えつつ聞くと、浩輔くんはメガネの奥の目を細めた。


「どこかに出かけようよ」

「え?」

「ご飯でも一緒にどう?」


浩輔くんが屈託のない笑みを浮かべる。


「行かない」


即座に答えると、彼はつかつかと私に歩み寄った。

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