強引社長といきなり政略結婚!?
自転車のハンドルを持つ私の手に力が入り、そこから力みが全身へ伝わる。
不意に浩輔くんの手が伸びて、私の頬を包み込んだ。
「冷たいなぁ。ほら、車に乗って」
「行かないってば」
とっさにその手を払いのける。
浩輔くんは一瞬驚いたように目を丸くしてから笑った。余裕の笑顔だ。
「汐里のそういう強気なところ、すごく好きだな」
「浩輔くんのこと、嫌いじゃないよ。でも、ただの幼馴染なの」
それ以上でも以下でもない。
「浩輔くんだってそうでしょ? 十年以上会うこともなかったのに、どうして結婚なんて言い出すの?」
私には全然わからない。
確かにファーストキスの相手は浩輔くんだけど、あれは弾みで唇が触れ合っただけ。私が突然振り返って、そこに浩輔くんの顔がたまたまあっただけのことなのだ。キスにカウントすらできないかもしれない。
浩輔くんは少し困ったような顔で私を見た。