強引社長といきなり政略結婚!?

「うん、そうだねー。だけど、汐里に再会して、『あ、やっぱりいいかも』と思ってるところ」


悪びれもせず言った。
“かも”なら考え直してほしい。


「それに、別の男を想っている女を奪う快感もたまらない」

「……性格悪い」


私の口から、つい本音が漏れた。
昔は、そんなことに喜びを感じるような人じゃなかったはず。人懐こくて、いつもニコニコして憎めない人だったのに。


「とにかく行こうよ、汐里。空白の十一年を埋めよう」

「だから、行かないってば!」


掴まれた手を引き抜こうとした時だった。


「おやめくださーい!」


か細く高い声がかけられた。
そちらを見て絶句する。多恵さんが“ほうき”を逆さに握り締めて立っていたのだ。
思わぬ展開に、目が点になってしまった。

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