強引社長といきなり政略結婚!?

「汐里様から離れてください」


手も声も震えている。
私のことを救出するために出てきてくれたみたいだ。必死なのは、そのこわばった顔からもわかった。
浩輔くんが鼻から息を漏らすように笑う。


「どうも俺は歓迎されていないようだね」


私からパッと手を離した。
多恵さんのおかげだ。


「今日のところは諦めて退散しようっと。でも汐里、次は確実にさらうから覚悟しておいてね」


浩輔くんは、私の額を指先でツンと弾いた。
さんざん私を困らせたくせに、最後には「じゃ、またねー」なんて手を振って、爽やかな空気をまき散らして私の前から去った。


「大丈夫でございますか!?」


多恵さんがすぐさま私に駆け寄る。


「大丈夫だよ。あのくらいなんてことないから」

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