強引社長といきなり政略結婚!?
それに怯みそうになりながら、私はなんとか意思を貫こうと必死だった。
「日下部さんから聞きました」
「……なにを」
朝比奈さんの目が当惑したように揺れる。
「ほしいのは私じゃなく、藤沢ゴルフ倶楽部だと。私はおまけみたいなものだって。ひと目惚れは嘘だったんですね」
おかしいとは思ったんだ。冷静に考えれば、私にひと目惚れなんてありっこないのに。
しかも、喫茶店で男の人の手を捻り上げて説教する場面を見たあとだった。普通の男の人なら、遠慮したいタイプの女性だろうに。朝比奈さんの紳士的な猛プッシュに惑わされ、平静さを欠いてしまった。
日下部さんにその話を聞いた時に、朝比奈さんのことは諦めるべきだった。
「今ならまだ――」
「引き返せるとまた言うつもりか。汐里は身を引けると」
朝比奈さんが私の肩を揺らす。
「……はい」
唇が震える。