強引社長といきなり政略結婚!?

それに怯みそうになりながら、私はなんとか意思を貫こうと必死だった。


「日下部さんから聞きました」

「……なにを」


朝比奈さんの目が当惑したように揺れる。


「ほしいのは私じゃなく、藤沢ゴルフ倶楽部だと。私はおまけみたいなものだって。ひと目惚れは嘘だったんですね」


おかしいとは思ったんだ。冷静に考えれば、私にひと目惚れなんてありっこないのに。

しかも、喫茶店で男の人の手を捻り上げて説教する場面を見たあとだった。普通の男の人なら、遠慮したいタイプの女性だろうに。朝比奈さんの紳士的な猛プッシュに惑わされ、平静さを欠いてしまった。
日下部さんにその話を聞いた時に、朝比奈さんのことは諦めるべきだった。


「今ならまだ――」

「引き返せるとまた言うつもりか。汐里は身を引けると」


朝比奈さんが私の肩を揺らす。


「……はい」


唇が震える。

< 214 / 389 >

この作品をシェア

pagetop