強引社長といきなり政略結婚!?
心外だ。ツンと顔を背けたまま、「自分がされて嫌なことは、人様にもするなと父に言われて育ちましたので」と言う。
それは事実だ。しかし暗に、“嫌がっている私につきまとうな”と言いたかった。
ところが彼ときたら、それには気づかないらしい。「いい教えだ」と深く唸る始末。
「あんまりしつこいと警察に駆け込みますよ」
今度は脅すことにした。そうでもしないと、この人は本気で家まで追ってきそうだ。
「そうされるのはさすがに困る」
ハハッと乾いた笑いが路地に響く。
「それじゃ、もうこういうことはやめてください」
「それも困る」
ゴミを拾いながら顔も見ずに言うと、彼は理不尽なことを言い放った。
私のほうこそ困るというものだ。
「どうしてこんなことをするんですか?」
私の質問に、彼がゴミを拾う手を止める。