強引社長といきなり政略結婚!?
素直に応じて座ると、彼女は私の目の前に膝で歩くようにして移動してきた。
「西野家の家政婦は私が所属する協会に属していないのですが、知り合いの知り合いといったつながりで聞いた話がございます」
多恵さんをこの家に紹介してくれた【家政婦紹介所】は、日本でも規模の大きな家政婦協会に属しているらしく、たまに開催される協会の集まりに、多恵さんは真面目に顔を出している。そこが情報交換の場になっているのだろう。
「西野様には、長らくお付き合いをされている女性がいたそうです」
「そうなの?」
随分と強引に結婚を迫ってきたものだから、そんなことは考えもしなかった。
「ところがその女性は、家の都合で別の男性との結婚が決まってしまったそうです」
「家の都合って……政略結婚ってこと?」
「さようでございます。旦那様となられる方も、その女性をたいそうお気に召したらしく、西野様の出番も虚しく、半ば強引に結婚をお決めになったとか」