強引社長といきなり政略結婚!?
昨夜の話題に触れられ、顔が一気に熱を帯びてしまう。
「やめてってば、多恵さん」
頬を押さえて俯いた。
どこへ泊まろうと、彼とひと晩一緒だったことは事実。そこでなにがあったのかは、想像に容易いだろう。
「汐里様、お顔に“幸せ”と書いてございますね」
「え?」
逸らしていた視線を多恵さんに注ぐ。
「いえ、お顔だけでなく、全身で“幸せ”と言っているように見えます。キラキラに満ち溢れていて、私にはまぶしいくらいです」
「……恥ずかしいから、本当にやめて」
穏やかに微笑む多恵さんに懇願した。
「汐里様のお幸せが、この多恵のなによりの幸せにございます。絶対に朝比奈様とご一緒になってくださいませ」
「ありがと、多恵さん。私もそうしたいと思ってる」
そのために、目の前に山積することをひとつずつ片づけていこう。一成さんとの未来のために。
「ところで汐里様、そろそろお出にならないと、アルバイトの時間に間に合わなくなりますが」
「――いっけない!」
弾かれたように立ち上がり、急いで準備をして飛び出したのだった。