強引社長といきなり政略結婚!?
笑顔が凍りつく。
わからないはずがない。おじい様にしてみたら、昨日のパーティー会場から私が一成さんを連れ去ったも同然だろう。
「わしは、一成を綾香さんと結婚させるつもりじゃ。そなたには潔く身を引いてもらいたい」
やっぱりそうだった。私に釘を刺しにきたのだ。鋭い視線で射抜かれて、笑ったままではいられなくなった。
恐怖からなのか、それとも対抗意識からなのか、唇が震える。なにも言い返せない自分がもどかしい。
おじい様は私が怯んだ隙にゆっくりと立ち上がった。
「言いたいことはそれだけじゃ」
「ちょっと待ってください!」
椅子から一歩踏み出した彼を呼び止める。
店内に響き渡るほどの声を出してしまった。ここが、木陰だということを忘れていたせいだ。おじい様とふたり、どこか別世界にいるような気がしていたから。
でも、そんなことに構ってはいられない。
「申し訳ありませんが、身を引く気はありません」
戦いを挑むようでは決してなく、顎を引き努めて穏やかに。