強引社長といきなり政略結婚!?

私の宣言に、おじい様の眉がピクリと動く。
歯向かうようなことを言われるとは、思いもしなかったのかもしれない。


「一成さんのことを誰よりも愛していますから」


口に出してから、ハッとした。恥ずかしげもなく言ってしまい、ついうろたえる。考えるより先に唇が動いた感覚だった。
しかし、なんとか心を持ち直し、背筋をピンと伸ばす。

おじい様の目が揺れたのは、どういう思いからだろう。少しは私の想いが届いたのか。
それとも、はっきり言われても理解のできない、知能の低い女だという憐みからか。

おじい様はいったん目線を下げてから、もう一度私を見た。下げたほんの一瞬の間に、さっきまでの険しい目に塗り替わる。
ものすごい早業だと、妙なところに感心した。

おじい様が肩を上げて息を吸ったものだから、今度はなにを言われるだろうかと身構える。
ところが彼は、眉間に皺を刻んだまま息を大きく吐きだしただけだった。

なにも言わず私に背を向けた彼に、もう一度「一成さんとは別れません」と告げる。強い意志を見せつけた。

ところがおじい様はそれにも反応せず、そのまま店から出ていった。

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