強引社長といきなり政略結婚!?
姿が見えなくなると同時に、こわばっていた全身から力が抜けていく。その場に座り込みたい気分だった。
どうしよう……。
一成さんのおじい様に意見した恐ろしさが、今になって襲ってきた。
余計に疎ましく思われるかもしれない。反論せずに黙っていればよかったのかも。
心細さに膝が震えた。
「汐里さん、大丈夫ですか?」
ずっと様子を見守っていたか、ゆかりちゃんがすかさず駆け寄る。
お客さんからもチラチラと視線を投げかけられた。
「今の人、もしかして例の彼の関係者ですか?」
「……うん、彼のおじい様」
「うわっ、なんだか手強そう。あれ? でも結婚は、家同士で決まってることじゃなかったんですか?」
ゆかりちゃんは、どうして彼のおじい様が反対意見なのかと不思議なのだろう。
「ちょっといろいろあって……」
この場で説明するには込み入りすぎている。
口を濁していると、田辺さんから「ホットサンドできてるよ」と声がかかった。
それがスイッチとなり、気持ちを入れ替える。
「またあとでね」
ゆかりちゃんに耳打ちして、顔を覗かせている田辺さんの元へと急いだ。