強引社長といきなり政略結婚!?
「嘘ばっかり!」
おはようの挨拶並みに頻発しているような軽さだった。どこにも実感がない。
いくら男性経験のない私にだって、そのくらいはわかるのだ。
「ほら」
突然、彼がハンカチを差し出す。
「……なんですか」
「ゴミ拾いで手が汚れただろう」
なんてスマートなことをするのか。
男性からそんな扱いをされたことがないだけに、どぎまぎしてしまう。そんな自分が本当に情けない。
それもこれも、二十八年もの間、大切にされ過ぎてしまったがゆえ。
……それは違うか。これまで男っ気がなかったのは、私に女性としての魅力が欠落しているからだ。
「だ、大丈夫ですから。ご心配なく」
立ち上がり、自転車のカゴに積んだバッグからハンカチを取ろうとした。
ところが、それがあたふたとしていたものだから、すぐさま彼が私の目の前に立つ。