強引社長といきなり政略結婚!?

一成さんの『心配いらない』という言葉を信じるのだ。


「そんなに俺のことが嫌い?」

「浩輔くんのことが嫌いなわけじゃなくて、一成さんのことが好きなの」

「少しは俺を気づかってよ。これでも汐里に結婚を申し込んでるんだからさ」

「だからこそ正直に言うの」


気を持たせるほうが失礼だ。
それに、浩輔くんは私に特別な感情はないはずだから。

ほどなくして木陰の前に車が停められた。


「俺と結婚しても、ここで働くの?」

「だから、浩輔くんとは結婚しないってば」


私が言い返すと、彼はケラケラと小気味よく笑った。おもしろがって言っているようにしか見えない。


「はい、これ」


奪われていた私のバッグが手元に戻る。
“ありがとう”言うべきか否か。いや、ここは毅然とした態度で臨むべきだろう。

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