強引社長といきなり政略結婚!?
無理やり車に乗せられたことに対する憤りを見せるべく、無言を貫く。
すると浩輔くんは、「アルバイト、がんばってー」と手をヒラヒラ振り、これまた軽い調子で私を送り出した。
帰りの足はどうしようかと気づいたのは、彼の車が遠く霞んでからのことだった。
ふと、バッグの中からオルゴール音が流れる。スマホの着信音だ。
多恵さんだ。どうしたんだろう。
応答をタッチすると同時に、『汐里様!?』とただらぬ様子の彼女の声が耳の奥まで響く。
『ご無事でございますか!?』
「無事もなにも……。今、木陰に着いたところだけど。どうしたの?」
『……よかった』
多恵さんの言葉が震える。
『アルバイトへ出かけたはずなのに、自転車が残されていたものですから……』
……そうだった。
自転車を庭先に置き去りだ。
多恵さんのこと。それを見つけて、一大事になっていたに違いない。誘拐でもされたんじゃないかと勘違いしていたんだろう。
申し訳ない気持ちになる。