強引社長といきなり政略結婚!?
結婚を賭けた一大決戦


それからなにごともなく、三日が過ぎた。
手袋持参で浩輔くんがやってくるかと身構えていたけれど、まったく音沙汰なしだ。

ヒヤヒヤながらも、今か今かと浩輔くんを待つことになるとは。余計な気苦労はさせないでほしい。
それを引き起こしたのは私自身のくせに、言いがかりで浩輔くんを心の中で責めていた。

もしかしたら、浩輔くんの車に手袋を忘れたのは私の勘違いなのかもしれない。もしくは、手袋をしていこと自体が、私の記憶違い。

そんなことを考えながら、お風呂上りに自分の部屋でヨガをしていると、パタパタというスリッパ音がドアの向こうで止まった。
ノックと同時にドアが開かれ、多恵さんが顔を覗かせる。


「汐里様、朝比奈様がお見えになりました」

「えっ?」


鷲のポーズのまま固まっていると、スーツ姿の一成さんが入ってきた。心なしか不機嫌そうに見える。ポーズを解いた私の前に、彼があぐらをかく。
そして、不意にポケットをまさぐって一成さんが取り出したのは、なんと私の手袋だった。


「あー!」


当然ながら声が出る。

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