強引社長といきなり政略結婚!?
嵐のようにやってきた縁談
無理やり押し付けられたハンカチを返せないまま、五日が過ぎていた。またすぐにでもお店にやってきそうな勢いだったというのにぱったり。
動きのまったく読めない、気まぐれな人だ。きっと気が変わったのだろう。私の頑なな態度が、彼の熱を冷ましたのかもしれない。
それならそれでよかった。
アルバイトを終えて自宅に着き、「ただいま」と玄関を開けた時だった。そこには、なにやら落ち着きなくそわそわとした多恵さんが、まるで私を待ち構えるかのようにして立っていた。
「汐里様!」
「どうかしたの? 家政婦協会の集まりは?」
確か、午後から出かけると言っていたはず。
またなにか心配事でも勃発したか。
彼女は、私が靴を脱ぐのを今か今かと見つめている。
「大変でございます!」
「なにが大変なの?」
呑気に尋ねると、多恵さんは眉尻をいっそう下げて私の手を握った。