強引社長といきなり政略結婚!?

「西野がこれみよがしに会社に持ってきたらしい。ふたりで出かけた時に汐里が忘れていったと」

「――違います!」


なにそれ。確かに忘れてしまったのかもしれないけれど、ふたりで出かけてなんかいない。


「どこがどう違う?」

「アルバイトに行こうと家を出た時にバッグを奪われたの!」


半ば強引に車に乗せられたのだと、その時の顛末を話して聞かせると、一成さんは険しくしていた表情を緩めた。
彼が長いため息を吐く。


「そんなところだろうとは思っていたんだ」

「それならどうして、そんなに怒るんですか」


口がへの字になる。


「知りたいのは俺のほう。ったく、なにをやってんだ俺は」


一成さんが自分の髪をぐしゃぐしゃにしてから、右手でかき上げる。それから罰が悪そうに私を見た。

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