強引社長といきなり政略結婚!?

「……何時何分にトイレに行ったとか、なにを食べたとかもですか?」


一成さんがあまりにも重苦しい顔をするものだから、それを少し和らげようというつもりで笑顔を浮かべ尋ねる。
すると一成さんは目に鋭さを込めて、私の額を指先でパチンと軽く弾いた。


「――ッ」

「茶化すな」


弾かれた額を押さえ、彼に「ごめんなさい」と謝る。


「でも、これだけは信じてください。私が一成さん以外に惹かれることはありませんから」


私が言った途端、彼の顔が赤くなる。私から目を逸らして、口を手の甲で覆った。
一成さんでも照れることがあるのかと、ちょっと意外だ。


「……ダメだな、俺は」


一成さんがポツリとつぶやく。


「汐里のこととなると冷静じゃいられなくなる」

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