強引社長といきなり政略結婚!?
彼の視線が私へと戻った。
切なくなるような眼差しに鼓動がドクンと弾む。
一成さんの手が私の頬に伸びる。近づいてきた彼の顔に目を伏せた時だった。
――ココン!
部屋が激しくノックされる。
私たちは揃って目を見開いた。
「汐里、一成くんが来てると聞いたんだが」
父がそう言いながらドアを開け放つ。
弾かれたように背を向け合う私たち。
父はそんな私たちを見て、「なんだ、ケンカでもしたのか?」と目を瞬かせた。
「……ち、違うよ」
「ご挨拶もせずに汐里さんの部屋にズカズカと……。申し訳ありません」
一成さんは素早く立ち上がって頭を下げた。
「いや、いいんだよ、一成くん」
宥めるように手をひらひらとさせる。
「それで、どうかしたの?」