強引社長といきなり政略結婚!?

大学時代にサークルで行ったゴルフ場で父に見初められ、卒業と同時に結婚。私と同じく社会の波に揉まれずに育った。

父は「申し訳ありませんねぇ」なんて彼に言いながら、私を手招きする。

これが静かにしていられようか。
父に向けていた視線に鋭さを上塗りして、彼へと注ぐ。


「どうしてこんなところにいるんですか」


顎を引き、できる限りの低い声で言った。
それなのに彼ときたら、おっとりとした微笑みで小首を傾げて「驚いた?」と返したのだ。
“驚いた?”じゃない。


「ハンカチなら返しますから」


綺麗にアイロンがけしたハンカチをバッグから取り出す。彼に近づき、それを突き返した。


「あらまぁ、ふたりとも、もうそんなに親密な仲だったの?」


母が声を弾ませる。


「違うってば!」


私の唇が自然と尖る。
おまけに、自分でもわかるほど眉間に力が入った。

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