強引社長といきなり政略結婚!?
それなのに彼は私の様子に動じることなく、穏やかな笑顔で「ありがとう」とハンカチを受け取るのだから参ってしまう。
「今日ここへ来たのは、お父様に、汐里さんとの結婚の承諾を得るためだよ」
平然と言い放った。
随分といろんなことをすっ飛ばす人だ。私たちは恋人以前に友達でもなければ、知り合いでもない。二週間くらい前にちょっと話しただけの間柄。しかも、彼から一方的に。
「汐里、こちらの朝比奈さんがぜひとも汐里をと言ってくださっているんだ」
「言っていることが、よくわからないんですけど」
「とにかくこちらに座りなさい」
父に言われて渋々座る。
向かいに座る彼は、口元に笑みを浮かべて私のことを見ていた。
「こんなに素敵な方なんだ。汐里も異論はないだろう?」
「ちょ、ちょっと待ってよ。お父さん、気は確か?」