強引社長といきなり政略結婚!?
不意に肩を引き寄せられ、体が浩輔くん側に大きく傾いた。
「ちょっ……やめ……」
手を突っ張ったものの、彼はそれをものともせず腕を私の背中に回す。
彼に抱きしめられる体勢になってしまった。
「もう、ほんとに……やめて!」
私の大きな声に浩輔くんが一瞬怯んだ隙に、渾身の力を込めて彼の胸を押す。体勢を崩した彼から体を離すことに成功した。
もたつく手でロックを無理やり解除し、ドアを開け放ち急いで車から降り立つ。
いっそう激しくなった雨の中、駆け出した。
全力疾走なんて、いつぶりか。右も左も、自分が今どこにいるのかもわからないまま。
とにかく浩輔くんから少しでも離れたかった。
この雨の中、歩道を行く人は誰ひとりいない。行き交う車のライトが時折私の目を照らし、まぶしさに瞼を閉じた。
どのくらい走ったか、息が上がり足取りも重くなったところで振り返る。浩輔くんが追ってきている様子はなかった。
足を緩め、トボトボと歩きだす。容赦のない雨のせいで、頭からつま先までびっしょりだ。