強引社長といきなり政略結婚!?
シャワーを浴び終えて脱衣所へ出ると、用意されていたのはライトグレーのスエットの上下だった。大きさからすると、きっと一成さんのものだろう。さすがに女性用の下着はどうにもならなかったらしく、置いていなかった。
袖と足元は二重折り。パンツを履いていないせいでスース―するのは、この際仕方がないだろう。濡れたものを履くわけにはいかない。
置いてあったドライヤーで髪を乾かし、バスルームをあとにする。
どこへ行ったらいいか迷って、この前おじい様に会わせてもらったリビングへ行くことにした。大きな木製のドアを開けると一成さんがすでにそこにいて、ちょっとした緊張感に包まれる。
眩暈を起こしそう。
「……これ、ありがとうございます」
一成さんにスエットを指差す。
すると彼は、プッと軽く噴き出した。
「ぶかぶかだな」
入口に突っ立ったままの私の元へ笑いながら歩み寄る。
張り詰めていた空気がフッと緩んだ。
「もう一回折ったほうがよさそうだな」