強引社長といきなり政略結婚!?

一成さんはそう言いながら、私の腕を取って袖をまくり上げた。


「……怒ってないんですか?」


一成さんの視線が手元から上がる。
真顔で見つめられて息を飲んだ。


「怒ってた。さっきまではね。シャワーを浴びたら、それと一緒に流れたみたいだ」


……よかった。
小さく息を吐く。


「汐里はどうやら、俺を困らせるのが趣味みたいだな」

「――そんなことないです」


わざわざ困らせて喜ぶはずがない。
拳を振って抗議すると、一成さんは「冗談だ」と破顔した。


「西野浩輔に無理やり乗せられたんだろう?」

「そうなんです。バッグを――」


そこでハッとした。浩輔くんの車にバッグもスマホも置き去りだ。

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