強引社長といきなり政略結婚!?
「もう大丈夫みたい。ほら」
ベッドから起きてその場でスキップしてみせる。
「まぁ……よかった……」
多恵さんは手を胸の前で組んで、今にも泣きそうな顔をした。
「汐里様が高熱を出すなんて、藤沢家でお世話になってから初めてでしたから、それはもう心配で心配で」
救急車を呼ぼうとするくらいだったから、その心配ぶりはよくわかる。
「ごめんね、多恵さん、いろいろと……」
私が浩輔くんに連れ去られたのだと一成さんから連絡を受けた時、やはりというべきか、多恵さんは失神してしまったそうだ。すぐに意識は回復したそうだからよかったけれど。
とにかく、多恵さんにはこのところ心配のかけどおしで、謝ることばかりの気がする。
「いえ、汐里様がご無事ならもうそれで……」
多恵さんは今にも涙ぐみそうだった。ちょっとオーバーだ。まるで私が死の淵でも彷徨っていたみたい。
そんな雰囲気を払しょくしようと、「さっぱりしたいからお風呂でも入ろうかな」と明るく言う。
多恵さんは目尻を拭いながら「では、直ちに準備をいたしましょう」と、いったん私の部屋を出て行ったのだった。