強引社長といきなり政略結婚!?
「そうだよ、汐里」
一成さんが私の背中をそっと撫でる。
「ですが、私が一成さんと結婚したいと言ったばかりに……」
「待ちなさい。なにか勘違いをしておらんか? わしが今日ここへ汐里さんを呼んだのは、命を助けてくれたお礼をしたかったからじゃ」
頭を上げて、おじい様を見る。
私にお礼を……?
「日下部から聞いたんじゃ。意識を失ったわしを背負って、クラブハウスまで運んでくれたと」
「あ、はい……」
「一成との結婚を邪魔する憎々しいじいさんだというのに、そんなことも構わずに必死だったそうじゃないか。おかげでわしはこうしてピンピンしておる。本当にありがとう」
初めて見るおじい様の穏やかな表情だった。
厳しいことばかり言われてきた相手から感謝されるとは思いもせず、恐縮して小さくなる。
「俺からも、もう一度言わせてくれ。どうもありがとう、汐里」