強引社長といきなり政略結婚!?

「ごめん。悪かった」


私の剣幕にタジタジになりながら、一成さんは両手を開いて私を宥めようとする。“どうどう”と、馬でも落ち着かせているみたいだ。


「一成さん、ほんとにひどい」


不満が唇の先に集結して尖る。


「まぁまぁ汐里さん、そんなに怒らないでやってくれ」


おじい様に言われてハッとした。その存在が一瞬のうちに彼方へ飛んでしまっていたのだ。
恥ずかしさに肩をすくめた。


「とにかく、そうと決まれば結婚は早いほうがいい。日下部にふたりの婚約披露パーティーの手配を任せてあるから、汐里さんもそのつもりでいるんじゃぞ」

「……婚約披露パーティー?」


あれだけブレーキがかかっていたのに、一歩前進した途端、ものすごい加速度だ。
私でもついていけないくらいに話が進んでいく。

< 348 / 389 >

この作品をシェア

pagetop