強引社長といきなり政略結婚!?

浩輔くんの名前が出たものだから、私もつい身構えた。


「家政婦協会のつてで聞いたところによりますと、西野様がお付き合いをなさっていたお相手の女性ですが、来週の日曜日に結納を控えているそうです」

「そうなんだ……」


私たちの婚約披露パーティーと同日だ。
西野くんは、本当にこのままでいいのかな……。

彼にはさんざん振り回されたけれど、西野くんなりの事情はわからなくもない。幼馴染というアドバンテージがあるからか、心から怒る気にはなれないのだ。

その時玄関のチャイムが来客を告げて響いた。


「ちょっと失礼いたします」


多恵さんが軽く頭を下げ、インターフォンのほうへと向かう。そして受話器を上げた途端、「え!?」とそこから飛び退くような仕草をした。


「多恵さん、どうしたの?」

「汐里様はお下がりください」


多恵さんが私を制するように右手をかざす。
ただならぬ様子だ。

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