強引社長といきなり政略結婚!?
慌てて彼女を私の背後に押し込み、「ごめんなさい、日下部さん」と一応謝る。
「とにかくふたりとも落ち着いて」
腕組みでゆかりちゃんを下等動物のように見下ろす日下部さんと、私のうしろから「イーッ!」と歯をむき出しにするゆかりちゃん。
……どうして“佳き日”に、私がケンカの仲裁に入らなくちゃならないの。
不満が口からこぼれそうになった時だった。
「悪いが、汐里とふたりきりにしてくれないか」
一成さんの恐ろしく低い声が轟く。
その顔を見てみれば、眉をピクリとひくつかせ、一成さんが日下部さんとゆかりちゃんを睨むようにしていた。
「――大変失礼いたしました」
すぐに表情を引きしめた日下部さんが背筋を伸ばす。背中に定規でもあてられているような体勢だ。
ゆかりちゃんも「ごめんなさい」と肩をすくめて小さな声で謝った。
そして、ふたり揃ってそそくさと控室から出る。