強引社長といきなり政略結婚!?
「だって、おじい様をひとりにするわけにいかないから、実家に戻ったんですよね? だから、ふたりきりで住むことはできません」
ただでさえ、おじい様は高齢なのだ。真紀さんがいるとはいっても、一成さんがいるのといないのとでは安心感が違うだろう。その上、退院して間もない。今日は体調を考えて車いすだ。
それにこれは内緒だけれど、私の料理の腕前がまだ未熟だから。真紀さんがいてくれたほうが助かる。
一成さんは穏やかに微笑んでから、意地悪な色を目の端に浮かべた。
「それじゃ交換条件だ」
「なんですか?」
「今ここで、汐里から濃厚なキスをしてくれたら、その条件を飲もう」
「そんな!」
せっかく唇をツヤツヤに仕上げてもらったのに。キスをしたら台無しになってしまう。
一成さんは、私が座っていた椅子に腰を掛け、私の手を引っ張って目の前に立たせた。
ニコニコと無邪気な笑顔を浮かべて私を見上げる。“ほれほれ”とばかりに、自分の唇を指差した。