強引社長といきなり政略結婚!?

「……軽くチュッとするだけですからね」


濃厚なキスは無理。彼を牽制する。
腰を曲げて前屈みになり顔を近づけていく。
一成さんの唇に触れる直前、彼の瞳が鋭く光ったように見えた次の瞬間――。
彼が素早く私を引き寄せる。


「きゃっ!」


バランスを崩した私は、一成さんの膝の上に座るような体勢になってしまった。
そして私の頬に手を添えた彼と唇が重なる。


「――んっ」


グロスが取れちゃう!
彼の胸を押したものの、一成さんはビクともしない。いくらお転婆な私でも、さすがに力では敵わないのだ。
強引に唇を奪ったわりには、そのキスが優しくて、すぐに抵抗する意思が消えていく。
突っ張っていた腕を彼の首に回した時には、一成さんの口づけに溺れていた。


「汐里様!?」


コンコンとドアがノックされる音と共に、私を呼ぶ声が響く。この声は多恵さんだ。
キスに夢中になっていた私たちは、そこでパッと唇を離した。

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