強引社長といきなり政略結婚!?
「ゆかりちゃん、お疲れさま」
私より早く出勤していたゆかりちゃんは、私が声をかけるとパッと顔を明るくさせた。
「汐里さん、お疲れさまです!」
彼女は二十二歳の大学四年生。
ぱっちりとした目とプルンとした唇はアイドル並みのかわいらしさ。華奢なうえ色白で、田辺さんと並ぶとオセロのように見える。
顎のラインまである天パの髪はちょうどいい具合にふんわりとしていて、まるで最初から狙っていたような“ゆるふわヘア”だ。
田辺さんは『この店には看板娘がふたりもいて助かるよ』なんて、私とゆかりちゃんを指して言ってくれるけれど、それは私に対する社交辞令だとわかっている。
まれに綺麗だと言われることはあっても、かわいいと言われたことは一度もないからだ。
多分それは、二重ながらも切れ長な目元のせいと、百六十五センチの身長のせいだろう。百五十センチにも満たないゆかりちゃんの隣では、威圧感のある“大女”になってしまうから。
そしてこの店には、私たちの他にアルバイトが四人いる。
ふたりはゆかりちゃんと同じく大学生の男の子。残りのふたりは四十代の女性。
このごろのシフトでは、ゆかりちゃんとふたりになることが多い。