強引社長といきなり政略結婚!?
◇◇◇
それから三十分ほど走った車は、再び私の家の前へと停められた。
「今日はこのくらいにしておこう。次は一緒に食事をしようか」
愛想のいい顔を向ける。
フンとばかりに顔を背けると、彼が私の顎を掴んで自分のほうへと顔を向けさせた。
「――な、なんですか」
「おやすみのキス」
言うが早いか彼の唇が迫り、あっという間に私の唇に触れた。ふにゃっという柔らかい感触だった。
驚きに体が硬直する。頭も働かない。全身の細胞が停止ボタンを押されてしまったようだった。
数秒後に唇が離れると、彼は柔らかな笑みを浮かべた。
「汐里の張り手が飛んでくると思って身構えていたんだけど」
「……え?」
そう言われて、細胞がようやく活動を始める。