強引社長といきなり政略結婚!?

とっておくってなに。次回の楽しみってなに。
ここは早いところ退散するに限る。


「失礼します」


そう言ったものの、手がもたついてシートベルトがすんなり外れない。それもこれも、突然のキスにドキドキしているせいだ。

彼がクスッと笑う。
動揺していることがばれているに違いない。
朝比奈さんは私の手をそっと避け、シートベルトを外してくれた。


「……ありがとうございます」


これにはお礼を言うしかない。
頭を下げてドアに手をかけると、彼の手が私の右手を引き留めた。
朝比奈さんの真顔に、意図せず鼓動がトクンと打つ。


「俺は本気だ。汐里を絶対に惚れさせる」


決して冗談には思えない真剣な表情だった。
それが伝わってきて、否応なしに私の鼓動を速める。
別に彼のことが好きになったからというわけじゃない。それもこれも、恋愛経験が乏しいからにほかならない。
もっときちんと恋愛をしてくるんだった。

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